2011年4月28日木曜日

政策系大学院と自治体政策形成(7)

第2は、政策系大学院修了者のキャリアパスを考慮した環境整備を行うべきである。

政策系大学院を修了し一定レベルの政策形成能力を身につけた職員を組織の有用な人的資源ととらえ、いかに政策形成に活用できるかはいずれの自治体にも共通の課題である。

この点につき、たとえば大学院修了者に条例制定や計画策定への参加機会を与えることや各種プロジェクト・チームのメンバーに抜擢参画させるなど、できるだけ意思決定過程や集団討議にコミットさせることにより、大学院で培った能力が発揮できるような人事的配慮も必要であろう(注)。

政策能力のある職員を育成することは組織内のシンクタンク機能を充実させることができるだけでなく、大学院修了者が職場に増えることで政策的議論のレベルアップや組織風土の変革にも寄与するはずだ。


(注)筆者の知る限りでは、せっかく政策系大学院を修了してもそれとは全く無関係の部署に配属させられる例があまりにも多いように見受けられる。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月27日水曜日

政策系大学院と自治体政策形成(6)

以上の考察を踏まえて、地方分権時代における自治体の政策形成に関する提案をしたい。

第1は、前述のような政策分析能力を有する人材の養成を急ぐべきである。

自治体の有する地域資源を活用し、かつ地域特性を踏まえた独自性の高い政策の立案を行おうとしても、現状では、専門的な政策課題に対する洞察力や政策分析能力を併せ持つ人材が圧倒的に不足している。しかし、こうした政策分析能力はいわゆる企画課だけの専売特許ではない。なぜなら、政策分野あるいは部署ごとに抱える課題やテーマは異なっており、それらがますます高度化し専門的になっているためである。

そこで、当該自治体において政策的に重要と考えられる課題に対応したセクションごとに、“政策分析のプロ”としての職員を戦略的に配置できるように養成すべきだ。職員の政策系大学院への自主進学にのみ依存するのではなく、大学院派遣制度を創設活用することで意欲のある職員を組織的にバックアップすることも重要である。こうした人材は年に数名程度しか輩出できないかもしれない。だが、行政内部からの変革を促進するチェンジ・リーダーとしての期待は大きい。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月26日火曜日

政策系大学院と自治体政策形成(5)

それでは、そもそも、自治体政策の現場でそうした高度な政策分析能力が必要なのであろうか。必要だとすれば、どのようなケースであるのだろうか。

近年の政策評価(行政評価)は自治体により多様な手法が導入されているが、いずれもPlan-Do-Check-Actionのマネジメントサイクルにより、行政活動とその成果を可能な限り定量的に把握しようとするものである。こうした背景には、住民の価値観の多様化に伴い住民の総意を判断することが困難となっていることに加え、かつては経験則やあうんの呼吸で行政運営を行うことができたのに対し、今やそのような意思決定だけでは到底対応できない状況にあることが考えられる。

住民に対する説明責任の向上や意思決定プロセスにおける透明性の確保の観点から、これまでの行政運営や意思決定のあり方に大きな変革が迫られている。そのためには、できるだけ客観性と合理性を有する説得技術としての政策評価・分析能力が必要不可欠だ。

こうした政策の分析評価の方法には、法学や政治学・行政学などの知識に加えて、システム分析やオペレーションズ・リサーチなどの工学的手法、費用便益分析・産業連関分析などの経済学的手法、あるいは政策対象となる住民ニーズを確認する統計分析や社会調査手法といった社会学や心理学等で開発されてきた様々な方法がある。しかし、このような政策分析スキルはあまりこれまで職員研修では行われていない。自治体にとってまったく手薄な状況にあるといってもよい。

一方、これら政策分析手法に関しては、いずれも大学の各学部で従来から一定の研究実績や人的資源があるものであり、特に学際的な政策系大学院では一通り学ぶことが可能となっている。

したがって、政策評価時代に対応した高度な政策分析スキルを効率的にマスターするためには政策系大学院が最も適しているといえよう。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月25日月曜日

環境問題における住民参加・協働を振り返る


ようやく2011年4月20日(水)朝日新聞夕刊の記事を確認した。

『環境 国際会議でNGO育つ えこ記事人びと4 』(7面)より一部抜粋。

「リオ」は行政も変えた。当時大阪府豊中市の職員だった佐藤徹は、上司の川崎健次(故人)から「アジェンダ21」の翻訳を命じられた。持続可能な21世紀のため、リオで採択された行動計画。自治体も独自の「ローカルアジェンダ」を策定すべしとの一項があった。
 
環境行政一筋の川崎は、以後このカタカナ文字を唱えて回る。市内の環境団体と議論を始め、行政への注文や批判の聞き役に徹した。99年にできたローカルアジェンダは、市民がすぐ実践できる88の目標を掲げた。その重みは、市の環境計画と対等だった。

「温暖化のような新しい課題が公と民の協働を促進した」。現在、高崎経済大で教壇に立つ佐藤は振り返る。



抜粋終了。


先月久しぶりに再会した、京都市環境管理課長の宇高史昭さんによれば、最近はローカルアジェンダ21が話題にのぼることが少ないという。
 
しかし、新藤(2004:267)が指摘するように、「ローカルアジェンダ21が物語るように、国内の各地域におけるグローバルな視野を持った環境政策の開発と実施を必要とする」ことは言うまでもない。

<注>写真は地球温暖化防止京都会議COP3(1997年12月8日、撮影;佐藤徹)

<参考>
佐藤徹「豊中市の環境マネジメントと環境パートナーシップ」『環境マネジメントとまちづくり-参加とコミュニティガバナンス-』学芸出版社、2004年

新藤宗幸『概説日本の公共政策』東京大学出版会、2004年、p.267

2011年4月23日土曜日

環境問題における住民参加・協働

4月20日(水)の朝日新聞夕刊に、「環境問題における住民参加・協働」についての私のコメントが掲載されているはずだが、まだ確認していない。

当初は割と大き目の連載企画だったようだが、大震災でやむなく縮小された模様。

2011年4月22日金曜日

政策系大学院と自治体政策形成(4)

ひとくちに政策系大学院といっても実に多様である。通常、大学院(以下、断りのない場合は修士課程とする)では、規定数の単位取得と修士論文の提出が義務づけられており、政策系大学院も同様である(注)。講義のカリキュラムは大学によって異なるが、法律・政治学・行政学・経済学・政策科学などをベースに構成されていることが多い。

一方、自治体ではかねてより職員研修としての政策研修がある。地方分権時代を担う職員の政策形成能力の向上をねらいとして実施されている。

概して、2日間程度の短期型研修では政策形成技法や思考ツールの紹介と簡単な演習を行い、1年から半年程度の長期型研修ではグループに分かれてのフィールド・リサーチを通じて「地域はどうなっているのか」「何が問題となっているのか」といった問題発見能力の養成に重点をおいた研修となっている。

またこれ以外にも自治体でおこなわれる研修としては、自主政策研究グループ、自治体シンクタンクへ出向、長期派遣研修など様々な形態が存在するが、いずれの研修においても、断片的な知識やスキルの修得にとどまる可能性が高い。

そのため、幅広い知見と視野に立ち、問題の構造化をおこなったり、データを調査収集したり、定量的な分析をおこなうなど、高度な政策分析能力を修得することが困難である。この点、政策系大学院では政策研究に必要な基礎理論を体系的に学習することができるとともに、論文作成を通じて政策分析能力や論理的思考力の修得が行いやすい。

(注)ただし最近は修士論文を必修として課さない大学院もある。そうしたところでは修士論文とワーキングペーパーのどちらかでよいとする選択制となっている。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月21日木曜日

政策系大学院と自治体政策形成(3)

なぜ政策系学部・学科や政策系大学院が急速に設立されたのであろうか。
様々な要因が考えられるが、主な背景としては次の2つがあるだろう。

第1は、複雑で混沌とした現代にあっては、政府や地方自治体は現実の課題と問題点を迅速かつ的確に把握するとともに、問題解決に向けた具体的な方策を打ち出さねばならず、これまで以上に高い政策能力が必要とされている点で
ある。すなわち、従来型の思考回路や行動形態では激動の現代社会に十分対応できない。それゆえ既存の学問体系にとらわれることのない学際的な政策研究の必要性が増すこととなった。

第2は、大学を取り巻く環境変化である。少子・高齢化の急速な進展により、これまでの18歳入学者の確保が困難となり、大学入学者の年齢層に変化をもたらすこととなった。また、大学間の提携、国公立大学の独立行政法人化(注)、大学の第三者評価、大学の地域貢献・社会貢献への要請など大学改革に向けた取り組みが具体化した。生き残りをかけた、いわば社会から選ばれる大学への転換を余儀なくされた。こうしたなかにあって、大学は中央省庁や地方自治体等で働く社会人の政策形成能力や政策分析能力の養成機関としても社会的役割を果たそうとしたものと考えられる。

(注) 平成23年4月1日、高崎経済大学も市立大学から公立大学法人へと移行した。
(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月20日水曜日

政策系大学院と自治体政策形成(2)

政策系大学院は日本よりも米国において歴史がある。ハーバード大学ケネディ・スクールの公共政策プログラム、ニューヨーク州立大学(バッファロー)における政策科学プログラム、ミシガン大学(アナーバー)の公共政策研究所、カリフォルニア大学(バークレー)の公共問題大学院、カーネギー・メロン大学の都市・公共問題大学院、ジョージタウン大学公共政策大学院、シラキュース大学マクスウェルスクールなどが有名である。

これに対し、日本では昭和52年(1977年)に新構想の大学院として埼玉大学大学院政策科学研究科が設置された。現実の政策形成に有効で適切に資することができる学際的な政策研究と政策科学の体系化と構築を目的とし、学部段階の教育プログラムを持たず、大学院固有の教員と施設を保有した独立大学院として全国に先駆けて創設されたものである。

その後しばらく、政策系学部・学科・大学院の設置に大きな変化はなかったが、1990年代に入り、急速に増加した。慶応大学総合政策学部(1990年)を皮切りに、中央大学総合政策学部(1993年)、立命館大学政策科学部(1994年)、大阪大学大学院国際公共政策研究科(1994年)、関西学院大学総合政策学部(1995年)、同志社大学大学院総合政策科学研究科(1995年)などが次々と開設された。


(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77かあら一部抜粋、加筆修正。

2011年4月19日火曜日

政策系大学院と自治体政策形成(1)

1990年代以降、国公立大学・私立大学を問わず、政策系学部・学科や大学院が急速に設置されてきた。

高崎経済大学においても地方分権時代の人材育成をめざし、地域政策学部が平成8年(1996年)に設立された(注1)。最近では2011年4月には愛知大学地域政策学部、龍谷大学政策学部が開設されている。

一方、政策系大学院についても主要大学で一通り設置された感がある。進取の気性あふれる若手の自治体職員が政策系大学院へ自主進学するケースや、厳しい財政状況にも関わらず政策系大学院への職員派遣制度を創設する自治体も珍しくない(注2)。

しかし、そもそも政策系大学院に学ぶことが個人の政策形成能力の向上にどれほど貢献するのであろうか。
しかも政策系大学院で学んだ知識やスキル、ひいては政策系大学院を修了した者が自治体の政策形成にどのように活かされるべきなのだろうか。こうした疑問が浮かび上がってくる。

そこで、まず政策系学部・大学院の設置動向やその背景を概観したうえで、次に自治体職員が政策系大学院で学び何を得ることができるかを検討し、これらを踏まえて自治体の政策形成に関して考えてみたい。


(注1)高崎経済大学の地域政策学部は日本初の「地域政策学部」とされる。
(注2)どちらかと言えば1990年代は職員派遣制度を有する自治体は多くはなく、昼夜開講制であっても必修科目を履修するためには休暇を取得せねばならないケースも見られた。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月18日月曜日

総務省:地方公共団体における行政評価の取組状況

地方公共団体における行政評価の取組状況調査は、平成14年度以来から毎年実施されている。

平成22年10月1日現在の全国自治体(都道府県・市町村)における行政評価の導入率は54.6%とのこと。

総務省報道資料:地方公共団体における行政評価の取組状況(平成22年10月1日現在)

平成21年10月1日現在では50.6%であったから、4.0ポイント上昇したことになる。ちなみに平成14年度調査では10%程度であった。

54.6%という数字を高いと見るか低いとみるか。団体規模別の行政評価導入率は都道府県98%、政令指定都市95%、中核市95%、特例市100%、市区78%、町村30%ということから、自治体の規模と行政評価の導入率は相関している。今後、町村レベルにおいて導入が進むかどうかであるが、しばらくの間は導入が進むであろう。だが、他と同様、8割程度まで上昇するであろうか。疑問である。

なぜなら町村レベルでは職員数が相対的に少ない。すなわち、行政評価を担当するであろう企画・総務系の職員は実にあれもこれも雑多な業務担当しているのである。行政評価に時間と手間をかける暇はあまりない。

ところで行政評価は制度として導入されたが(条例化している団体はほんのわずかである)、どうも行政評価の、行政組織内での評価(評判)はよろしくないようである。

行政評価の理想と現実には大きなギャップが存在している。このギャップをどのように埋めていけばよいか、知恵の出しどころである。

<参考> 佐藤徹『創造型政策評価-自治体における職場議論の活性化とやりがい・達成感の実現-』(公人社、2008年)、第1章「自治体行政評価の理想と現実」

2011年4月15日金曜日

ISAHP2011

AHPは「階層分析法」「階層化意思決定法」と訳される。最近はAHPの入門書や簡易なテキストも出版されている。

今年は、AHPの国際シンポジウムであるISAHP(The International Symposium on the Analytic Hierarchy Process)の開催年である。

The ISAHP 2011 meeting will be held in Sorrento (Naples - ITALY) from June 15 to June 18, 2011.

http://www.isahp.org/italy2010/index.php

開催地はイタリアのナポリにあるソレント。6月15日から18日まで開催予定らしい。

今回は参加しないが、8年前、2003年8月に研究発表のため参加したISAHP2003はインドネシアのバリで開催された。渡航直前、首都ジャカルタで米国系の高級ホテルで爆発テロ事件が起きるなど大変緊迫していたが、AHPの提唱者サーティ(Thomas L.Saaty)とも面会し、今では楽しい思い出となっている。

<参考>佐藤徹『自治体行政と政策の優先順位づけ-“あれもこれも”から“あれかこれか”への転換-』大阪大学出版会、2009年

2011年4月14日木曜日

たかさき市民討議会Voice2011・第3回準備委員会

昨日13日は、午後7時から高崎市役所本庁舎17階172会議室にて、たかさき市民討議会Voice2011・第3回準備委員会に出席した。

高崎での「市民討議会」は今年で3度目である。

昨年同様、市民討議会の準備委員会は高崎青年会議所と高崎市のメンバーで立ち上がっている。メンバーに変更はあるが、運営上のノウハウは蓄積されている。

今年は過去2度の実績と反省を踏まえ、「何を目的に行い、得られた貴重な意見をどのように生かすか」をより明確にし実施することが確認された。準備委員会ではまさに「飛躍」の年にしたいとの声が上がった。

市民討議会の本番は、9月3日(土)、4日(日)の方向で検討が進められている。  

<参考>篠原一『市民の政治学:討議デモクラシーとは何か』(岩波新書、2004年)

2011年4月13日水曜日

政策評価と評価基準

「政策評価」というものは、評価に際して何らかの体系や基準に照らして行われるものである。

この何らかの体系や基準があるのとないのとでは大違いである。そして、その何らかの体系や基準はオープンにされて初めて外部からの批判にさらされる。

さて今回、東京電力福島第一原子力発電所で相次いで起きている事故について、レベル5から最悪の「レベル7」に評価が引き上げられた。これはチェルノブイリ原発事故と同じ評価である。国際原子力機関(IAEA)などが定めた国際原子力事故評価尺度(INES)に照らして評価が行われている。

評価結果だけを見れば、福島第一原発の事故はチェルノブイリ原発事故と同じである。これはあくまでINESに照らして評価した場合の判定結果である。別の評価基準、評価尺度で評価をすれば、また違った評価結果となるであろう。


政策の評価でも、どのような評価基準(評価尺度とも)を設定するかが問題となる。 単に「事業の廃止」「予算の削減」といった評価結果に目を奪われることなく、-どのような評価基準で評価を行い、どのような論理でそのような評価を下したのか-つまり、「評価基準」「評価結果」「評価結果に至るロジック」の3点セットで、政策評価(行政評価)を捉えることが肝要である。

2011年4月12日火曜日

「自治基本条例」→「まちづくり基本条例」

本年4月1日施行を目指して1年以上にわたり議論されてきた自治基本条例は条例案が議会への上程が見送られた。

そして、
①その名称を「高崎市自治基本条例」ではなく「高崎市まちづくり基本条例」とする、
②前文中の「最高規範」を削除する
などの修正が行われることとなった。

広報高崎2011年3月15日号「自治のひろば」(13頁)によると、市は今後も市民へ条例について正しく理解してもらえるよう、さらに時間をかけ周知活動が行うとしている。

先週4月7日(木)付の朝日新聞朝刊には、『まちづくり条例に異論 「市民」の定義で立ち往生』(2011統一地方選 高崎の課題(下))と題する記事(担当:乳井泰彦記者)がある。自治基本条例に関する私のコメントも掲載されている。

要するに、今後どのようなまちづくりを行うのか。これに尽きるだろう。

条例制定の行方は、今後、新しい市長と議会の判断にゆだねられる。

2011年4月11日月曜日

『知豊向夢員』 山路栄一さん

フジサンケイビジネスアイ(2011年4月8日付)の「地方の元気前線」のコーナーに、顔写真入りで三重県職員の山路栄一さん(三重県環境保全事業団参事兼企画課長)が紹介されている。

山路さんは、「脱・お役所仕事」をねらいに自治体職員の意識改革に取り組むため、「自治体職員有志の会」を立ち上げた。全国の自治体職員約700名が集う。

「自治体職員有志の会」ホームページ
http://sites.google.com/site/cdkikaku/

山路さんによると、活動のきっかけは1995年から県知事をつとめ「改革派知事」として知られた北川正恭さんに触発され、知事引退後の三重県がもとの県庁にもどっていまうことに危惧を抱いたことにあるという。

公務員叩きは半ば日常茶飯事になっている。しかし、一方で「スーパー公務員」と称される方々も全国各地にいることを忘れてはならない。このたびの大震災でも、自ら家族等が被災しているにも関わらず、地元の復興に向けて尽力しておられる公務員も多い。

2011年4月8日金曜日

前期講義について

予定通り、平成23年度の前期講義が4月8日(金)に開始されます。

ただし、東日本大震災の対応措置として、最初の2週間(8日~21日)「各講義における学習指導・相談のための授業」(計画停電に当たった場合の講義内容や講義方法の変更、全体を通じての講義内容の変更、その他、履修に当たっての相談や留意事項など)を実施することになっています。

通常の講義は4月22日(金)から開始されます。


そこで、以下のとおりとします。

「公共政策論Ⅰ」:4月11日(月)及び18日(月)の講義は、上記のとおり、学習指導・相談のための授業を行います。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので、いずれかの週に必ず出席してください。

「市民参加論」:4月12日(火)及び19日(火)の講義は、上記のとおり、学習指導・相談のための授業を行います。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので、いずれかの週に必ず出席してください。

「日本語論文指導」:新入生の相談に応じるため、通常授業を4月11日(月)から開始します。

「M政策評価特論」(大学院):通常授業を4月11日(月)から開始します。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので必ず出席してください。

2011年4月7日木曜日

「市民会議」と「市民討議会」

2005年に著した『市民会議と地域創造』(ぎょうせい)は、「市民会議のバイブル」として世に送り出したものだ。

実際、市民会議の事務局を担当することになった自治体職員の方々が参考にしておられ、大変うれしい限りである。

一般的に、市民会議とは「地域的公共的課題の解決に向けて、市民が主体で行政と協力・連携して、継続的に活動を行う中間的な組織や場」をさす。

かつては審議会中心であった条例や計画づくりにおいて、いまや市民主役の市民会議方式を採用する自治体も珍しくない。

また個々の政策領域における地域活動や計画推進の母体として市民会議が果たす役割も小さくなくなっている。

一方、市民討議会は2005年に東京青年会議所によって千代田区で初めて実施されて以来、これまでにのべ約150件の開催実績がある。

『市民会議と地域創造』の執筆時には、まだ日本に「市民討議会」は存在しなかった。そのため、本書では市民討議会については全く触れていない。

いずれ近いうちに、「市民会議」と「市民討議会」の両者の理論的整理を行うことにしている。

<参考>『市民会議と地域創造―市民が変わり行政が変わると地域も変わる!』(ぎょうせい、2005年)

2011年4月6日水曜日

卒業論文集(第5期ゼミ)


今春卒業した第5期ゼミ生の卒業論文集が完成した。卒業研究の統一テーマは「施策評価システムにおける評価指標の設定と活用に関する研究」である。

当ゼミでは、地方自治・公共政策・行政学に関わる領域でテーマ設定を行っているが、本研究は政策評価(行政評価)に関するものである。


卒業研究までの基本的な流れは以下のとおり。 


1)3年前期に、テーマ設定を行い、既往文献にあたることで基礎知識を獲得した。

2)3年後期には、予備的検討として先行研究などから仮説を設定し、それらを検証するために、神奈川県座間市に全員でインタビュー調査に出かけた。

3)4年生の卒業研究では、前年の研究蓄積をもとに、①実態把握のためのアンケート調査票の作成、②仮説の設定、③自治体へのインタビュー調査(ゼミ生11名が全員それぞれ自治体にアポイントメントを取って実施。合計11自治体)を行った。

4)以上の検討結果を踏まえて、仮説検証と考察を行い、卒業論文を纏め上げた。


なお、卒業論文は近日中に大学図書館2階の卒業論文集コーナーに配架される予定である。


(注)写真は座間市への視察時(平成21年12月21日、インタビュー調査)の様子。

2011年4月5日火曜日

文献紹介


『豊中における環境活動の15年~ローカルアジェンダ21に取り組んで』
 (特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21)


1992年の地球サミットから、はやいもので来年で20年を迎える。ローカルアジェンダ21は地球サミットで採択されたアジェンダ21に端を発する地域のアクションプランで、先進国・途上国に関わりなく世界各地の都市やまちで策定されている。

持続可能な地域づくりを目指して、Think Globally,Act Locallyを掛け声に、豊中市内の市民・事業者・行政機関の約150団体が結集して「とよなか市民環境会議」が発足したのが1996年(平成8年)。市町村レベル全国初の環境パートナーシップ組織として知られている(注:現在はワーキンググループが独立して、NPO法人となっている)。

その後、とよなか市民環境会議はローカルアジェンダ21(豊中アジェンダ21)の策定や地域での草の根的活動を続け、その取り組みが環境庁地球温暖化防止活動大臣表彰、毎日新聞地方自治大賞優秀賞などをはじめ対外的にも高い評価を受けている。

私も市の環境政策を担当していたころ、同市の環境基本条例制定、市民環境会議の設立、ローカルアジェンダ21の策定などに関わったことがある。それが縁で、今年3月には市民環境会議の設立15周年記念イベントの講演に講師として招かれた。その際手にしたのが本書である。

体裁はISBNコードがないので書籍というよりも報告書に近いが、中身は15年間の単なる記録集ではない。市民と行政との対立から協働にいたるプロセスで奮闘した人々の熱い思いが感じ取れるように描写されている。

本書はA4サイズ370ページを超える大著であるが、思わず読みふけってしまうのはこうした理由からだろう。

【問合せ先】
 特定非営利活動法人とよなか市民環境会議アジェンダ21事務局
 TEL:06-6863-8792 FAX:06-6863-8734
 http://toyonaka-agenda21.jp/agenda/book.htm

 本書の案内チラシ

追記 「市民と行政の協働に方程式は存在するのか、存在するとすればどのような解なのか」。こうした「問い」に答えるべく、本書をモチーフにした『協働の方程式』をおそくとも来年には出版する予定にしています。すでに出版社も決定しています。

2011年4月4日月曜日

献本御礼(2)

Human resource management in the public sector


(Kwansei Gakuin University Press)


関西学院大学の稲沢克祐先生から献本がありました。有難うございます。


本書はPeter Smart博士との共著で、共著者の稲沢先生によれば、「3年間にわたる日英の自治体等でのヒアリングなどをもとに、公的部門、特に自治体における人的資源管理の平易な解説書を目指したもの」ということです。


HRMについては、Rona S Beattie と Stephen P. Osborne の編著による同名の書籍(2008)がありますが、本書は随所に図表が盛り込まれ、わかりやすい解説書(約170頁)として工夫されています。