2010年12月21日火曜日

政策の「参加度」と「透明度」

月刊『地方自治職員研修』(公職研)2011年1月号(新年号)が出ました。

本号では2011年の新年号にふさわしく、「都市格・自治体格アップ大作戦!」が特集されています。

私も小論『政策の「参加度」と「透明度」』を寄稿しております。

政策の「参加度」と「透明度」をいかに向上させるべきかについて論考しています。


<参考>
公職研のページ

職場で議論しながら、楽しく事業を評価する

先週木曜日・金曜日と、埼玉県上尾市役所で職員研修の講師をつとめてきました。


■職場でワイワイ・ガヤガヤ「議論」しながら、楽しく「評価」する

テーマは「政策形成」。題して「職場議論が活性化する!創造型政策評価実践演習」。
主な対象者は主任職4年目の職員33名(一般行政職員だけでなく、消防士・保育士・保健師など多種多様)。

私はこの研修の講師を平成19年度以降毎年つとめており、事務局の方も慣れておられます。

ちまたでは「書類づくりが中心の行政評価」が多いなか、そうではなく「職場で議論しながら事業の評価を進める方法論」を実践演習により体得することが、本研修のねらい。

研修は連日9時から17時まで、5分刻みのタイムスケジュールに沿っておこなわれ、結構ハードなもの。
研修生の皆さん、お疲れ様でした。

今回は6チームに分かれ、同市で実際に行われている6事業を選定し、政策の分析と評価をおこなった。

いずれのチームも熱心に議論しながらロジックモデルの作成、政策効果の算定、問題の発見と再定義などを行い、事業の改善提案に繋げられたと思う。

今回も、職員の方々のポテンシャルの高さを感じることができた。

また研修終了後の受講アンケート結果から、研修生の満足度も一様に高かったようである(5段階の満足度評価で「5」又は「4」とした割合=87%)。


■「PC」との対話ではなく、「職場」での対話を

以上は、あくまで職員研修である。

だが実際に「創造型政策評価実践演習」(通称:CPE)を導入している自治体もある。
群馬県安中市では昨年度(21年度)よりCPEに取り組み、成果を上げている。

90年代半ば以降、ITの進展によって、職場ではノートPCに向かって黙々と仕事するスタイルへと様変わりした感がある。

けれども何年かに一度は少しの時間立ち止まり「自分たちが担当している事業や業務がどのような問題解決に役立っているのか」「どのような成果を上げているのか」について、職場でじっくり議論し評価してみてはいかがだろうか。きっと仕事のやり方が変わるはずである。


<参考>
・佐藤徹『創造型政策評価-自治体における職場議論の活性化とやりがい・達成感の実現』(公人社、2008年)
・佐藤徹「創造型政策評価の実践法」『月刊 地方自治職員研修』2009年7月号~11月号連載

2010年12月11日土曜日

市民討議会の実態調査:吉川市(埼玉県)

昨日は、ゼミ生(3年10名)とともに、吉川市役所(埼玉県)へ行ってきました。


吉川市は、人口約6万人、埼玉県南東部に位置し、東は江戸川をはさんで千葉県野田市・流山市、西は中川をはさんで越谷市・草加市、南は三郷市、北は松伏町と、境を接している。「なまずの里」として売り出し中のまちでもある。

さて、3年ゼミ生(第6期ゼミ)の調査研究テーマは「地域政策における市民討議会の有効性」。

ゼミでは、これまで「市民討議会」や「プラーヌンクスツェレ」に関する文献調査と併行して、たかさき市民討議会VOICE2010(高崎市と高崎青年会議所の共催)の実行委員会にサポーターとして参画。また8月28日・29日の開催当日にはファシリテータを担うなど、実践的な調査にも取り組んできた。

そして、毎年恒例の「自治体ヒアリング調査」として、埼玉県吉川市へうかがった。

主な調査事項は、以下のとおり。

( 1 )市民討議会の実施経緯と実施状況
( 2 )総合計画策定における市民討議会の目的と意見活用方策
( 3 )他の市民参加手法と比較した場合の市民討議会の有効性など

ご多忙中のところ2時間以上に及ぶ質疑や意見交換に御対応いただいた、政策室副主幹の岡田さん、大瀧さん、市民参加推進課長の中村さん、感謝申し上げます。


吉川市では平成22年度から23年度にかけて第5次総合振興計画を策定中。市民討議会は23年度も開催予定とのこと。同市の取り組みには今後も注目していきたい。

<参考>
吉川市総合振興計画のページ
まちづくり未来会議(市民討議会)のページ

2010年12月9日木曜日

「市民の目線」と「役所の論理」

昨日は教授会終了後18:30~20:45まで、第25回高崎市自治基本条例を考える会(於:高崎市役所、もちろん公開)に、高崎市自治基本条例策定アドバイザーとして出席しました。

高崎市自治基本条例を考える会は条例策定にあたり高崎市が設置したもの。メンバーは一般公募市民と若手中堅職員から構成された、いわばワーキンググループ。昨年11月から約1年間にわたり、議論を積み重ねてきた(自治基本条例は高崎市の中核市への移行時期にあわせ、2011年4月施行を目指している)。

そしてその議論の成果がようやく「提言書」としてまとめられ、先月(11月)に市長に提言された。
提言書はこちら

詳しい経過は、市のホームページや広報たかさきの連載記事を参照。
高崎市自治基本条例を考える会のページ
広報高崎平成22年11月15日号の該当ページ

昨日の会議では、考える会の「提言」を受けた行政(市)側の「回答書」とも言える「条例素案」(同素案はパブリックコメントに付することを想定したもの)が示された。会議の前半、約1時間にわたり提言書の内容に対する修正・変更・削除及びその理由等が事務局(市企画調整課)から説明。その後、考える会のメンバーからの質疑応答となった。主に考える会の市民メンバーからは「“市民の目線”で考え直してほしい」「これまで議論してきた“私たちの思いやこだわり”が薄れてしまっている」「他市の自治基本条例と殆ど変わらないものになってしまった」などといった意見も表明された(注記:表現は必ずしも正確ではない)。
考える会の市民メンバーの目には、行政の条例素案が長期にわたって苦労して作り上げた自分たちの提言書と比べ、内容的にかなり後退した、と映ったようである。

特に条例の「目玉」となるはずであった「協働推進会議」の設置(提言書p.20)や「条例の運用状況について評価し、必要な提言を行う“運用推進委員会”」の設置(提言書p.34)については、条例素案ではそれぞれ「協働を進めるための体制整備及び環境整備努めるものとする」、「必要に応じ、組織を設け、この条例の運用状況について検証を行うものとする」と修正変更されている。

“現状では「協働推進会議」や「運用推進委員会」の組織のありかたが不確定であるために具体的な組織名称を削除した”と事務局からの説明があった。この点につき、条例の運用状況について評価や提言を行う「運用推進委員会」については、私がかつて策定委員(副委員長)として関わった川口市自治基本条例では明確に組織名が規定されている。川口市では自治基本条例施行の半年後に「自治基本条例運用推進委員会条例」が制定され、既に「運用推進委員会」が設置されている。

<参照> 
川口市自治基本条例のページ
川口市自治基本条例運用推進委員会のページ


そのほかにも多数の修正点があるが、大きな変更点としては、
・提言書(p.15)では「市民参加推進条例の制定」とされていたものが、条例素案では「別に条例を定め」とするにとどまっている。
・提言書(p.33)では「条例の位置づけ」の章で「高崎市の最高規範であり」としていたが、条例素案では「最高規範」が削除されている。

以上の点について私の発言のポイントは以下の通り。
・条例の策定自体が最終目的ではない。現状の素案では、自治基本条例制定後の具体的展開が見えない。組織のありかたについては川口市のように「別に条例に定める」とすることも可能であるため、「協働推進会議」や「運用推進委員会」の設置を再検討する余地があるのではないか。また仮に条文上に具体的な組織名を記せなかったとしても、実を取って平成23年度からこれら組織を発足させることを是非検討してほしい。
・市民の熱い思いのつまった提言書を活かし、「市民の目線」に立って条例素案を再度検討することを期待したい。


制度上「考える会」には政策決定権はなく、提言権があるだけである。その点については「考える会」の皆さんも重々承知されている。

翻って、事務局(市企画調整課)も残された時間の中で役所内部の調整に追われ(法規担当との折衝など)、その大変な労力には皆が感謝している。

今後は条例素案がパブリックコメントに付され、議会での審議へと移っていくことになる。