2010年12月9日木曜日

「市民の目線」と「役所の論理」

昨日は教授会終了後18:30~20:45まで、第25回高崎市自治基本条例を考える会(於:高崎市役所、もちろん公開)に、高崎市自治基本条例策定アドバイザーとして出席しました。

高崎市自治基本条例を考える会は条例策定にあたり高崎市が設置したもの。メンバーは一般公募市民と若手中堅職員から構成された、いわばワーキンググループ。昨年11月から約1年間にわたり、議論を積み重ねてきた(自治基本条例は高崎市の中核市への移行時期にあわせ、2011年4月施行を目指している)。

そしてその議論の成果がようやく「提言書」としてまとめられ、先月(11月)に市長に提言された。
提言書はこちら

詳しい経過は、市のホームページや広報たかさきの連載記事を参照。
高崎市自治基本条例を考える会のページ
広報高崎平成22年11月15日号の該当ページ

昨日の会議では、考える会の「提言」を受けた行政(市)側の「回答書」とも言える「条例素案」(同素案はパブリックコメントに付することを想定したもの)が示された。会議の前半、約1時間にわたり提言書の内容に対する修正・変更・削除及びその理由等が事務局(市企画調整課)から説明。その後、考える会のメンバーからの質疑応答となった。主に考える会の市民メンバーからは「“市民の目線”で考え直してほしい」「これまで議論してきた“私たちの思いやこだわり”が薄れてしまっている」「他市の自治基本条例と殆ど変わらないものになってしまった」などといった意見も表明された(注記:表現は必ずしも正確ではない)。
考える会の市民メンバーの目には、行政の条例素案が長期にわたって苦労して作り上げた自分たちの提言書と比べ、内容的にかなり後退した、と映ったようである。

特に条例の「目玉」となるはずであった「協働推進会議」の設置(提言書p.20)や「条例の運用状況について評価し、必要な提言を行う“運用推進委員会”」の設置(提言書p.34)については、条例素案ではそれぞれ「協働を進めるための体制整備及び環境整備努めるものとする」、「必要に応じ、組織を設け、この条例の運用状況について検証を行うものとする」と修正変更されている。

“現状では「協働推進会議」や「運用推進委員会」の組織のありかたが不確定であるために具体的な組織名称を削除した”と事務局からの説明があった。この点につき、条例の運用状況について評価や提言を行う「運用推進委員会」については、私がかつて策定委員(副委員長)として関わった川口市自治基本条例では明確に組織名が規定されている。川口市では自治基本条例施行の半年後に「自治基本条例運用推進委員会条例」が制定され、既に「運用推進委員会」が設置されている。

<参照> 
川口市自治基本条例のページ
川口市自治基本条例運用推進委員会のページ


そのほかにも多数の修正点があるが、大きな変更点としては、
・提言書(p.15)では「市民参加推進条例の制定」とされていたものが、条例素案では「別に条例を定め」とするにとどまっている。
・提言書(p.33)では「条例の位置づけ」の章で「高崎市の最高規範であり」としていたが、条例素案では「最高規範」が削除されている。

以上の点について私の発言のポイントは以下の通り。
・条例の策定自体が最終目的ではない。現状の素案では、自治基本条例制定後の具体的展開が見えない。組織のありかたについては川口市のように「別に条例に定める」とすることも可能であるため、「協働推進会議」や「運用推進委員会」の設置を再検討する余地があるのではないか。また仮に条文上に具体的な組織名を記せなかったとしても、実を取って平成23年度からこれら組織を発足させることを是非検討してほしい。
・市民の熱い思いのつまった提言書を活かし、「市民の目線」に立って条例素案を再度検討することを期待したい。


制度上「考える会」には政策決定権はなく、提言権があるだけである。その点については「考える会」の皆さんも重々承知されている。

翻って、事務局(市企画調整課)も残された時間の中で役所内部の調整に追われ(法規担当との折衝など)、その大変な労力には皆が感謝している。

今後は条例素案がパブリックコメントに付され、議会での審議へと移っていくことになる。