2011年4月22日金曜日

政策系大学院と自治体政策形成(4)

ひとくちに政策系大学院といっても実に多様である。通常、大学院(以下、断りのない場合は修士課程とする)では、規定数の単位取得と修士論文の提出が義務づけられており、政策系大学院も同様である(注)。講義のカリキュラムは大学によって異なるが、法律・政治学・行政学・経済学・政策科学などをベースに構成されていることが多い。

一方、自治体ではかねてより職員研修としての政策研修がある。地方分権時代を担う職員の政策形成能力の向上をねらいとして実施されている。

概して、2日間程度の短期型研修では政策形成技法や思考ツールの紹介と簡単な演習を行い、1年から半年程度の長期型研修ではグループに分かれてのフィールド・リサーチを通じて「地域はどうなっているのか」「何が問題となっているのか」といった問題発見能力の養成に重点をおいた研修となっている。

またこれ以外にも自治体でおこなわれる研修としては、自主政策研究グループ、自治体シンクタンクへ出向、長期派遣研修など様々な形態が存在するが、いずれの研修においても、断片的な知識やスキルの修得にとどまる可能性が高い。

そのため、幅広い知見と視野に立ち、問題の構造化をおこなったり、データを調査収集したり、定量的な分析をおこなうなど、高度な政策分析能力を修得することが困難である。この点、政策系大学院では政策研究に必要な基礎理論を体系的に学習することができるとともに、論文作成を通じて政策分析能力や論理的思考力の修得が行いやすい。

(注)ただし最近は修士論文を必修として課さない大学院もある。そうしたところでは修士論文とワーキングペーパーのどちらかでよいとする選択制となっている。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。