2011年4月19日火曜日

政策系大学院と自治体政策形成(1)

1990年代以降、国公立大学・私立大学を問わず、政策系学部・学科や大学院が急速に設置されてきた。

高崎経済大学においても地方分権時代の人材育成をめざし、地域政策学部が平成8年(1996年)に設立された(注1)。最近では2011年4月には愛知大学地域政策学部、龍谷大学政策学部が開設されている。

一方、政策系大学院についても主要大学で一通り設置された感がある。進取の気性あふれる若手の自治体職員が政策系大学院へ自主進学するケースや、厳しい財政状況にも関わらず政策系大学院への職員派遣制度を創設する自治体も珍しくない(注2)。

しかし、そもそも政策系大学院に学ぶことが個人の政策形成能力の向上にどれほど貢献するのであろうか。
しかも政策系大学院で学んだ知識やスキル、ひいては政策系大学院を修了した者が自治体の政策形成にどのように活かされるべきなのだろうか。こうした疑問が浮かび上がってくる。

そこで、まず政策系学部・大学院の設置動向やその背景を概観したうえで、次に自治体職員が政策系大学院で学び何を得ることができるかを検討し、これらを踏まえて自治体の政策形成に関して考えてみたい。


(注1)高崎経済大学の地域政策学部は日本初の「地域政策学部」とされる。
(注2)どちらかと言えば1990年代は職員派遣制度を有する自治体は多くはなく、昼夜開講制であっても必修科目を履修するためには休暇を取得せねばならないケースも見られた。

(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。

2011年4月18日月曜日

総務省:地方公共団体における行政評価の取組状況

地方公共団体における行政評価の取組状況調査は、平成14年度以来から毎年実施されている。

平成22年10月1日現在の全国自治体(都道府県・市町村)における行政評価の導入率は54.6%とのこと。

総務省報道資料:地方公共団体における行政評価の取組状況(平成22年10月1日現在)

平成21年10月1日現在では50.6%であったから、4.0ポイント上昇したことになる。ちなみに平成14年度調査では10%程度であった。

54.6%という数字を高いと見るか低いとみるか。団体規模別の行政評価導入率は都道府県98%、政令指定都市95%、中核市95%、特例市100%、市区78%、町村30%ということから、自治体の規模と行政評価の導入率は相関している。今後、町村レベルにおいて導入が進むかどうかであるが、しばらくの間は導入が進むであろう。だが、他と同様、8割程度まで上昇するであろうか。疑問である。

なぜなら町村レベルでは職員数が相対的に少ない。すなわち、行政評価を担当するであろう企画・総務系の職員は実にあれもこれも雑多な業務担当しているのである。行政評価に時間と手間をかける暇はあまりない。

ところで行政評価は制度として導入されたが(条例化している団体はほんのわずかである)、どうも行政評価の、行政組織内での評価(評判)はよろしくないようである。

行政評価の理想と現実には大きなギャップが存在している。このギャップをどのように埋めていけばよいか、知恵の出しどころである。

<参考> 佐藤徹『創造型政策評価-自治体における職場議論の活性化とやりがい・達成感の実現-』(公人社、2008年)、第1章「自治体行政評価の理想と現実」

2011年4月15日金曜日

ISAHP2011

AHPは「階層分析法」「階層化意思決定法」と訳される。最近はAHPの入門書や簡易なテキストも出版されている。

今年は、AHPの国際シンポジウムであるISAHP(The International Symposium on the Analytic Hierarchy Process)の開催年である。

The ISAHP 2011 meeting will be held in Sorrento (Naples - ITALY) from June 15 to June 18, 2011.

http://www.isahp.org/italy2010/index.php

開催地はイタリアのナポリにあるソレント。6月15日から18日まで開催予定らしい。

今回は参加しないが、8年前、2003年8月に研究発表のため参加したISAHP2003はインドネシアのバリで開催された。渡航直前、首都ジャカルタで米国系の高級ホテルで爆発テロ事件が起きるなど大変緊迫していたが、AHPの提唱者サーティ(Thomas L.Saaty)とも面会し、今では楽しい思い出となっている。

<参考>佐藤徹『自治体行政と政策の優先順位づけ-“あれもこれも”から“あれかこれか”への転換-』大阪大学出版会、2009年

2011年4月14日木曜日

たかさき市民討議会Voice2011・第3回準備委員会

昨日13日は、午後7時から高崎市役所本庁舎17階172会議室にて、たかさき市民討議会Voice2011・第3回準備委員会に出席した。

高崎での「市民討議会」は今年で3度目である。

昨年同様、市民討議会の準備委員会は高崎青年会議所と高崎市のメンバーで立ち上がっている。メンバーに変更はあるが、運営上のノウハウは蓄積されている。

今年は過去2度の実績と反省を踏まえ、「何を目的に行い、得られた貴重な意見をどのように生かすか」をより明確にし実施することが確認された。準備委員会ではまさに「飛躍」の年にしたいとの声が上がった。

市民討議会の本番は、9月3日(土)、4日(日)の方向で検討が進められている。  

<参考>篠原一『市民の政治学:討議デモクラシーとは何か』(岩波新書、2004年)

2011年4月13日水曜日

政策評価と評価基準

「政策評価」というものは、評価に際して何らかの体系や基準に照らして行われるものである。

この何らかの体系や基準があるのとないのとでは大違いである。そして、その何らかの体系や基準はオープンにされて初めて外部からの批判にさらされる。

さて今回、東京電力福島第一原子力発電所で相次いで起きている事故について、レベル5から最悪の「レベル7」に評価が引き上げられた。これはチェルノブイリ原発事故と同じ評価である。国際原子力機関(IAEA)などが定めた国際原子力事故評価尺度(INES)に照らして評価が行われている。

評価結果だけを見れば、福島第一原発の事故はチェルノブイリ原発事故と同じである。これはあくまでINESに照らして評価した場合の判定結果である。別の評価基準、評価尺度で評価をすれば、また違った評価結果となるであろう。


政策の評価でも、どのような評価基準(評価尺度とも)を設定するかが問題となる。 単に「事業の廃止」「予算の削減」といった評価結果に目を奪われることなく、-どのような評価基準で評価を行い、どのような論理でそのような評価を下したのか-つまり、「評価基準」「評価結果」「評価結果に至るロジック」の3点セットで、政策評価(行政評価)を捉えることが肝要である。

2011年4月12日火曜日

「自治基本条例」→「まちづくり基本条例」

本年4月1日施行を目指して1年以上にわたり議論されてきた自治基本条例は条例案が議会への上程が見送られた。

そして、
①その名称を「高崎市自治基本条例」ではなく「高崎市まちづくり基本条例」とする、
②前文中の「最高規範」を削除する
などの修正が行われることとなった。

広報高崎2011年3月15日号「自治のひろば」(13頁)によると、市は今後も市民へ条例について正しく理解してもらえるよう、さらに時間をかけ周知活動が行うとしている。

先週4月7日(木)付の朝日新聞朝刊には、『まちづくり条例に異論 「市民」の定義で立ち往生』(2011統一地方選 高崎の課題(下))と題する記事(担当:乳井泰彦記者)がある。自治基本条例に関する私のコメントも掲載されている。

要するに、今後どのようなまちづくりを行うのか。これに尽きるだろう。

条例制定の行方は、今後、新しい市長と議会の判断にゆだねられる。

2011年4月11日月曜日

『知豊向夢員』 山路栄一さん

フジサンケイビジネスアイ(2011年4月8日付)の「地方の元気前線」のコーナーに、顔写真入りで三重県職員の山路栄一さん(三重県環境保全事業団参事兼企画課長)が紹介されている。

山路さんは、「脱・お役所仕事」をねらいに自治体職員の意識改革に取り組むため、「自治体職員有志の会」を立ち上げた。全国の自治体職員約700名が集う。

「自治体職員有志の会」ホームページ
http://sites.google.com/site/cdkikaku/

山路さんによると、活動のきっかけは1995年から県知事をつとめ「改革派知事」として知られた北川正恭さんに触発され、知事引退後の三重県がもとの県庁にもどっていまうことに危惧を抱いたことにあるという。

公務員叩きは半ば日常茶飯事になっている。しかし、一方で「スーパー公務員」と称される方々も全国各地にいることを忘れてはならない。このたびの大震災でも、自ら家族等が被災しているにも関わらず、地元の復興に向けて尽力しておられる公務員も多い。

2011年4月8日金曜日

前期講義について

予定通り、平成23年度の前期講義が4月8日(金)に開始されます。

ただし、東日本大震災の対応措置として、最初の2週間(8日~21日)「各講義における学習指導・相談のための授業」(計画停電に当たった場合の講義内容や講義方法の変更、全体を通じての講義内容の変更、その他、履修に当たっての相談や留意事項など)を実施することになっています。

通常の講義は4月22日(金)から開始されます。


そこで、以下のとおりとします。

「公共政策論Ⅰ」:4月11日(月)及び18日(月)の講義は、上記のとおり、学習指導・相談のための授業を行います。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので、いずれかの週に必ず出席してください。

「市民参加論」:4月12日(火)及び19日(火)の講義は、上記のとおり、学習指導・相談のための授業を行います。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので、いずれかの週に必ず出席してください。

「日本語論文指導」:新入生の相談に応じるため、通常授業を4月11日(月)から開始します。

「M政策評価特論」(大学院):通常授業を4月11日(月)から開始します。受講意思のある者は履修上の注意事項について説明しますので必ず出席してください。

2011年4月7日木曜日

「市民会議」と「市民討議会」

2005年に著した『市民会議と地域創造』(ぎょうせい)は、「市民会議のバイブル」として世に送り出したものだ。

実際、市民会議の事務局を担当することになった自治体職員の方々が参考にしておられ、大変うれしい限りである。

一般的に、市民会議とは「地域的公共的課題の解決に向けて、市民が主体で行政と協力・連携して、継続的に活動を行う中間的な組織や場」をさす。

かつては審議会中心であった条例や計画づくりにおいて、いまや市民主役の市民会議方式を採用する自治体も珍しくない。

また個々の政策領域における地域活動や計画推進の母体として市民会議が果たす役割も小さくなくなっている。

一方、市民討議会は2005年に東京青年会議所によって千代田区で初めて実施されて以来、これまでにのべ約150件の開催実績がある。

『市民会議と地域創造』の執筆時には、まだ日本に「市民討議会」は存在しなかった。そのため、本書では市民討議会については全く触れていない。

いずれ近いうちに、「市民会議」と「市民討議会」の両者の理論的整理を行うことにしている。

<参考>『市民会議と地域創造―市民が変わり行政が変わると地域も変わる!』(ぎょうせい、2005年)

2011年4月6日水曜日

卒業論文集(第5期ゼミ)


今春卒業した第5期ゼミ生の卒業論文集が完成した。卒業研究の統一テーマは「施策評価システムにおける評価指標の設定と活用に関する研究」である。

当ゼミでは、地方自治・公共政策・行政学に関わる領域でテーマ設定を行っているが、本研究は政策評価(行政評価)に関するものである。


卒業研究までの基本的な流れは以下のとおり。 


1)3年前期に、テーマ設定を行い、既往文献にあたることで基礎知識を獲得した。

2)3年後期には、予備的検討として先行研究などから仮説を設定し、それらを検証するために、神奈川県座間市に全員でインタビュー調査に出かけた。

3)4年生の卒業研究では、前年の研究蓄積をもとに、①実態把握のためのアンケート調査票の作成、②仮説の設定、③自治体へのインタビュー調査(ゼミ生11名が全員それぞれ自治体にアポイントメントを取って実施。合計11自治体)を行った。

4)以上の検討結果を踏まえて、仮説検証と考察を行い、卒業論文を纏め上げた。


なお、卒業論文は近日中に大学図書館2階の卒業論文集コーナーに配架される予定である。


(注)写真は座間市への視察時(平成21年12月21日、インタビュー調査)の様子。