2011年5月2日月曜日
政策系大学院と自治体政策形成(8)
第3は、大学の研究者と自治体職員のコラボレーションの場を設けるべきである。
政策研究は自治体職員だけではおのずと限界がある。自然科学分野では大学と民間企業が連携して共同研究が行われており、地域政策研究においても大学と自治体が連携・交流できるような場が必要である(注)。
自治体は政策現場で芽生える問題意識や政策課題を持ち寄り、大学は政策理論の実践的適用を試みる。概して、研究者は特定分野の理論面や分析技術の精緻化には秀でているが、それをどのように政策現場で活かしていくのかについては不得手である。これに対して、自治体職員は行政実務には精通しているが、政策の分析・評価手法の存在自体を知らないか、知っていたとしてもうまく活用できていない。
“理論と実務の融合”こそが政策研究の生命線だとすれば、大学と自治体、研究者と実務家の相互発展のためにも、コラボレーションできる場が必要不可欠である。その際、大学院修了者が大学と自治体の架け橋として大いに活躍することになるだろう(完)。
(注)研究者と実務家の交流の場としては各種学会やフォーラム等があるものの、いずれも特定の地域や自治体における政策課題のみを分析対象とするものではない。筆者の想定するコラボレーションの場とは、地域あるいは自治体が直面する政策課題に対し、当該地域の構成員たる行政と大学がそれぞれの立場を尊重しながら、その方向性や解決策を探ろうというものである。そういう意味では自治体シンクタンクも一つの方法ではある。また近年は都道府県が市町村の行政ニーズを調査し取りまとめ、それらを大学側に提供することで両者のマッチングを図る取り組みも見られるが、協働というよりは単なる委託(下請け)のような気がしてならない。
(出所)佐藤徹「自治体の政策形成と政策系大学院」『マッセOSAKA研究紀要第6号』(財団法人大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター),平成15年3月,pp72-77から一部抜粋、加筆修正。